インタビューマガジン『B.S.TIMES』。国内外のビジネスリーダーや文化人を専属の芸能レポーターが訪問して取材。隔月出版にて、フリーペーパーとWEB、Kindleにてリリースしています。

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45号紹介

株式会社ティーケーピー
コロナ禍による急落
原点回帰でV字回復へ

急成長からの多角展開
コロナで全てが一転


―2018年も本誌で取材させていただきましたが、当時は2017年に東京証券取引所マザーズ市場に上場したばかりで、最も勢いに乗っている時でした。それが一転、コロナで大きな打撃を受けた企業のひとつとなりました。まずは、そもそも貸会議室で知られるTKPですが、どのような仕組みのビジネスか簡単に伺います。
河野 当社は2005年創業以来、取り壊しの決まっているビルや使われていない施設を有効利用して、会議室や研修センター・ビジネスホテルなどに変え、企業や一般の人が利用可能にした空間再生のビジネスモデルを展開してきました。

―会議室のシェアリングビジネスは社会にインパクトを与えました。
河野 さらに空間再生事業に加え、お客様のニーズを拾いました。会議に弁当を配達してほしい、宿泊施設がほしいといった要望に応え、周辺ビジネスを展開したのです。2010年代に入るとインバウンドも増え、経済が活性化し空間が減少した。再生すべき空間がなくなったことで新築ビルからも仕入れました。その流れで大塚家具との業務・資本提携締結が始まり、オフィスビル領域を増やしたのです。

―レンタルオフィス『日本リージャスホールディングス』の買収もありました。
河野 本家本丸のオフィス事業は、家賃は高騰し、空室もない中で日本リージャスとぶつかるようになりました。そこで連携しながら次なる成長ラインを描いていました。

―コロナで全ての計画が覆ったと予想しますが、どのような状況でしたか。
河野 コロナ禍になり、すぐ資金調達に動きました。当社は日本でコロナを理由に金融機関から150億円を調達した先発企業でした。当初は1年待てば大丈夫であろうと予想しており、社員には「資金はあるから冬眠だ」と伝え、一時休止状態に。緊急事態宣言が出た2020年4〜8月、当社の主力となるTKPの売上は4分の1にまで下がり、株価は9分の1に下落。正直、地獄でしたね。

―いわゆる金融機関の『コベナンツ融資』と言われるものですね。
河野 はい。銀行の管理下へ置かれることになりました。事業はコア事業とノンコア事業に分類され、事業を精算しました。料飲事業などは全国的に精算しなくてはならず、苦しみました。

―初動が明暗を分けたのですね。
河野 緊急事態宣言前にいちはやく動いたことで助かりました。お金は血液。資金繰りできる現金があるかないかが全てでした。なんと言っても給料を払えなければ倒産です。もう少し銀行への働きかけが遅ければ、各航空会社への調達で当社は検討のテーブルに乗らなかったでしょう。

リーダー自ら先頭に
迅速な初動と苦悩


―第三波、第四波と落ち込むことになりましたが、ワクチンの接種会場としても活用されましたね。社長自ら迅速に動いたと伺いました。
河野 座して死を待つよりは打って出た方がいいだろう、ということです。私は当時の菅総理に会いに行き、職域ワクチンセンターに辿り着いた。企業人事部などで利用がはじまり、その後、企業の新入社員研修などでの利用に繋がっています。

―アパホテルや宿泊研修施設の事業もコロナ禍以前は好調でしたが。
河野 ホテル事業は2020年度、合計15億円の赤字を出しながら、動かしました。空間は使わなければ老朽化するので、無理やりにでも安く貸し続けたのです。

―どのタイミングから、経営状態が戻っているのですか。
河野 前期から戻り始めました。緊急事態宣言後の数字を見ていると、ちょうどそれが上場して間もない2017年頃の売上なのですね。そこで現在の経費を創業時のものまでダウンサイジングすれば、運営は大丈夫だろうと考えています。
―倒産した企業も多い中で、なぜ助かったのだと思いますか。
河野 企業の体力がモノを言いました。現金があり社員を守れること、いざというときにはリスクをとって攻められること、それが経営において大切ではないでしょうか。

―先ほど清算はつらかったと伺いました。
河野 「明日800億円の返済を」と銀行に要望されると返せない。すぐ倒産なんです。これまでやってきたことが全否定され、アパホテルとTKP以外は守れませんでした。ただ、かつてはダボハゼのように食べ、経営体が膨張していました。うなぎ屋にハワイアン料理・十勝料理店。海外事業はニューヨーク・ニュージャージー・台湾にも進出していました。今振り返るとそれらは全部赤字。いわゆる負の資産だったのです。いずれなんとかなるだろうと考えて、諦めきれずに続けてきたのが、強制終了です。通常は経営責任を問われるが、コロナでリセットさせられると仕方ないとみなされる。損切りさせられ、ある意味、助かった経営者は多いのではないかと感じます。

―リージャスの売却はどうでしたか。
河野 2019年に人生をかけて約500億円で買収。まさか3年半で手放すとは思いませんでした。なかなか諦めきれなかった。売却費用だけでどれほど損をするのかと悩ましかったです。

―サラリーマン時代の経験は今回の窮地で役に立ちましたか。
河野 伊藤忠商事の為替証券部でのディーラー経験によって損切ルールなどを熟知していたこと、かつての退職時に自身の価値を知ったことが、コロナ禍のみならず、リスクについての考え方や、迅速な意思決定に大きく役立っています。

人が動くことが
日本経済再生の鍵に


―今、事業は蘇ろうとしていますね。
河野 航空業界も徐々に黒字化する企業が出始めました。アパホテルもここ数年でDX化を加速させましたし、TKPは利益率を10%改善しましたから収益構造が違う。コロナ禍前に対して現在の利用率は6〜7割に留まっていますが、利益率が回復しています。利用率が完全に戻れば利益は1・5倍ほどになるでしょう。

―経済が戻ったとして、絶対的な国内の人口減は歯止めがかからない状態です。それに向けて、経営者のひとりとして、考えをお聞かせください。
河野 人口減になると一人が何役も役割を担わなくてはなりません。一人あたり1・5倍、時間ではなく生産性や効率をいかにして向上させるかが課題です。

―コロナで生まれたテレワークなどの新しい仕組みをどう感じられますか。
河野 正直、テレワークでは利益が上がりません。動いてこそ経済が上向くのです。出張に行き、ホテルに泊まる、人が動き始めるとそれに伴って消費が生まれる。基礎経済が動きます。さらにインバウンドが動き始めるとお金が落ちます。簡単に言うと私が「日本を観光立国にしなければならない」と考えるのはまさしくそこです。当社の会議室利用も人が動くことで成り立つビジネスです。そういった理由により、私はマスク反対派であり、テレワーク反対派です。コロナが第五類になったので、一気に変わっていくでしょう。

―コロナの閉そく感からどの程度で抜け出すというイメージがありますか。
河野 当社はリーマンショックのときも2年間の足踏みをしている。ですから今回もその程度の期間を経て回復するでしょう。私は今年51歳。これから再生の時代がやってきます。再生ビジネスのニーズがあるなら、原点だった利益率の高いTKPが生きる。当社にはリージャスを売却した約300億円の資金もありますから、それをてこにしていかに事業展開し、3,000億円に変えるかということが今の私の課題です。

―経営難に陥った旅行関係事業の買収などは考えているのですか。
河野 当社の根幹は再生ビジネス。当然ながら、事業再生や買収などは意識します。

―将来の夢は何ですか。
河野 現在の3千億円から1兆円の資産にしなければ、当社は日本を代表する企業にはなりません。それを実現するためには、今手持ちのラインアップだけでは弱いという印象です。昨今のM&A案件が予想に反して難しいものだったので、今後はTKPを支えるM&Aとは何かを模索しながら事業再生を果たし、日本を代表する企業へと成長させていきます。

―遠くない将来、そうなる日を期待しています。本日は貴重なお話をありがとうございました。     

(記者:仲井美和)

 

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株式会社ティーケーピー
代表取締役社長 河野 貴輝
東京都新宿区市谷八幡町8番地TKP市ヶ谷ビル2F
TEL.03-5227-7321(代表)
https://www.tkp.jp

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