道南バス株式会社
北海道老舗バス会社の革新経営
室蘭のアシとなり地域を守る

市民のアシとして愛され
現在は10カ所に営業所
藤波 室蘭は昔から鉄工の街≠ニしてにぎわっていたそうですね。
長谷川 この街はかつて18万人もの人が居住。当バスはまさに市民のアシでした。明治における屯田兵がいた時代には関西・四国からも人が訪れました。戊辰戦争で五稜郭の戦いがあったとき、土方歳三は室蘭から函館に入ったという話もあります。近くにアイヌ文化の博物館『ウポポイ』がありますが、毎年、海外からの大型客船が入港し文化や登別などの観光を楽しんでおります。
藤波 そんな中、『道南バス』も拡大の歴史をたどってきました。
長谷川 現在、室蘭市を中心に胆振・日高・後志地方まで営業所は10カ所あります。日高から札幌、ニセコの裏側、伊達室蘭、浦河町まで、毎日、約1200キロの距離を走行。さらに、夏は東京、冬は九州や沖縄を中心とする学生の修学旅行、株式会社農協観光などの大手旅行会社が企画する団体旅行といった貸切バスも賜っています。登別をはじめとするスキー場、札幌雪まつり、昨年は『エスコンフィールド』へのツアーなど地元を中心とした企画も好評です。
藤波 長谷川代表は歴史ある企業の事業再生を請け負うカタチで就任されたと。
長谷川 はい。当社はかつて洞爺湖の近くにあるレジャー施設関係を手がけていましたが、1975年に経営不振に。有珠山の噴火も重なり負債を抱えました。そこで、製鉄・石油会社をはじめとする地元経済界が事業を再生することになりました。
長谷川氏を推す声に
地域の発展と人材確保
藤波 長谷川代表はどちらの出身ですか。
長谷川 私は地元の出身です。札幌学院大学を卒業し、通関関連の仕事をして、地元に携わってきました。
藤波 卓越した手腕を買われ、『北海道バス協会』の会長に就任されています。
長谷川 2300社が加盟するバス協会です。私よりも経験豊富な方もいらっしゃる中、「多方面に視野を向けられる目があること」「地方の声を届けなければ」という趣旨のもとで、ご指名いただきました。
藤波 「室蘭観光協会」の会長にも就任されて、観光誘致面でも重責を担っています。どのような課題をお持ちですか。
長谷川 やはり運転手の確保や労務環境改善などが課題です。コロナ禍を過ぎて、室蘭の観光客は増えており、オーバーツーリズムの問題が起こるほどです。仕事は余るほどあり、春節のシーズンなど、観光客が増える時期は、それがより顕著。しかし、全国的に業界の人材課題は厳しい状況が続いています。当社は働き方改革に賛同し、前向きに取り組む他、賃金も2年間かけて上げ続けています。社員の生活を守り、夢のある仕事と感じてもらえるように努力をする。女性ドライバーはもちろん、移住者へのプロモーションなども大切です。
新しい取り組みに挑みつつ
住民生活の基礎を支える
藤波 社長に就任されたのはコロナ禍で、ご苦労もあったのでは。
長谷川 中国人観光客がピタッと止まりました。しかし、それが地元の観光に目を向けることになりました。例えば、市内中心部を流れる知利別川ですが干潮時は泥が覗き、満潮時はなみなみと水で満たされる川で、通常は船の往来はできませんが、秋は鮭も昇り非常に面白いスポットになると思い、街を違う角度から楽しむクルーズはどうかと、地元で白鳥大橋主塔クルーズを運行する会社に掛け合い、ツアーを計画しました。コロナ禍で小舟を浮かべ、中流域を往復する計画を実験。通常観光では採算はあわなかったものの、今年はイベント時のみの運行を企画したり、飲食店に立ち寄るプランも考えました。
藤波 様々なプランの仕掛け人としても知られています。
長谷川 1日フリーパス券でバスに乗り、親子で各地の謎を解くリアル謎解きイベントは好評です。日帰りバスツアーに船と周辺施設を組み合わせたり、街と一体化して盛り上げるクルーズプランもあります。
藤波 今後のプランはいかがですか。
長谷川 来年は、ベンツ社の中古バス『ネオプラン』を購入し、特徴のある車体に乗りながら夜の観光に出かけるコースを作ります。
藤波 非常に柔軟で面白い発想ばかりですね。100周年を迎えるにあたり、その意気込みをお聞かせください。
長谷川 今は業界全体が時代の変わり目にあたります。しかし、公共交通機関は皆さまの生活になくてはならないもの。もう一度、何のための事業なのかに立ち帰り、新しい制度を導入しながらも、まずはみなさまの生活の足を守る心がまえで、地域と密着して突き進んでいきたいです。
藤波 これからも地域の皆さまと共に、訪れる皆さまのためにも歩んでください。

[ Column ]
歴史研究が好きだという長谷川代表。かつては横浜の次に鉄道ができたほど栄えた室蘭の港について語ってくれた。「室蘭はかつて、主力戦艦の砲身が作られた場所でもあり、軍港として機能した」。「鶏を使わない『室蘭やきとり』は、兵士の軍靴を作るために、豚が多数飼われていた歴史があるから」などと、その歴史を楽しく紹介した。
[ Point ]
「バス業界単体で考えると難しい時代だ」と話す長谷川代表の言葉に私も大きくうなづきました。「これからは自治体にも協力してもらいながら、人が集まるおもしろい取り組みをやらなくては」という選択肢のコラボに、音楽、歴史、そしてプロレスを候補に挙げてくれました。嬉しいですね。
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道南バス株式会社
代表取締役社長 長谷川 義郎
北海道室蘭市東町3-25-3
TEL.0143-45-2131
http://donanbus.co.jp
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