ふじ養生クリニック福岡
抗がん剤の苦しみを減らし
希望をつなぐ「低用量治療」

父の死をきっかけに
患者と歩むがん治療
藤波 藤本院長は私と同郷だとか。
藤本 私の父が大分の国東出身です。それで、私の本籍地は、長らく大分でした。ですから、親子共に藤波さんのファンでした。
藤波 がん治療について、全国でも際立った取り組みをなさっています。
藤本 私は、自分がまだ医学生のとき、父を肺がんで亡くしたのです。父はまだ55歳。当時の私は循環器医療を志望していましたが、父の病を受けて、がん治療に転向しました。しかし、父は私が国家試験に合格する1カ月前に他界。抗がん剤が効かずに、8カ月間苦しんで亡くなったのです。私は、大学院でがんと免疫の研究をしました。しかし、今から30年も前のこと。免疫学はまだ不十分で、それを信奉するには時期尚早でした。私は改めて化学療法を中心とした医療に取り組んだのです。
藤波 「低用量の抗がん剤治療」は、どのようなきっかけで生まれましたか。
藤本 大学病院でふと疑問を覚えました。「治療により、苦しむ人がいるのはなぜか」と。あるとき「キツイ、だるい」と訴えたおじいちゃんに「ちょっと治療を休んで、次回から量を減らしましょう」と提案したのです。それが、標準医療とは違う道を歩くきっかけでした。副作用の影響は千差万別。食欲が進まない人がいる一方、食欲が増す患者を観察すると薬がよく効いているということが分かったのです。「検査データだけでなく、患者さんの希望にあわせて抗がん剤を使う」ことをはじめた結果、次第に私の患者は長生きすると評判になりました。
病気を意識させない
ライフスタイルを守る方法
藤波 自分のストレスと相談しながらの治療は効果をあげたということですね。
藤本 はい。基本は病気を意識させない治療≠ニライフスタイルを守る治療=Bすると、抗がん剤を半量にしても同じ程度の効果が出る。患者さんの「きつい、だるい、食欲がない」を聞き取って、薬の量を調整しました。さらに、旅行や孫との予定は優先して、できるだけ生活の中で病気のことを考えさせないように工夫。それらを私は、『低用量化学療法』と名づけ、大学病院で実践したのです。
藤波 ポイントはどこにありますか。
藤本 ポイントは3つ。@低い用量で行うことで抗がん剤の侵襲ダメージを減らす。A患者のスケジュールを乱さないB薬理を基本としてがんに効きやすい組み合わせをつくる。つまり、投薬用量の大小を、タイミング、期間を考慮して実施。薬理を踏まえて治療すると、がん細胞に薬が行き届きやすくなるように異常な腫瘍血管を消失させ腫瘍組織の減圧を図ったり、薬の入り口を増やしたり、がんが自分にとって有害な抗がん剤を吐き出そうとするのを抑えたりできます。
藤波 どういった点が新しいのですか。
藤本 今の医療では、薬の追加や組み合わせは考えます。しかし、「薬を導入しやすくして減らす」試みをする人は少ないのです。
心を中心に考える方法
治療の主役は患者自身
藤波 多くの成功事例を出しています。
藤本 大学病院で余命2カ月と宣告された方は、私のもとで7年間も生きました。ある方は肺がんを宣告されてから8年間も生きた。私は自分の治療が最高だとは思いません。あくまで主人公は患者。医師である私はそれに謙虚でなくてはならない。
藤波 患者が決めるということですね。
藤本 はい。私は大学病院の時代から「家族が来られるのは20時」と言われたら、20時まで待って、1時間以上かけて話しました。当方に来院される多くの方が「今まで、ちゃんとした病院で治療を受けてきたきたのに、分からないことがいっぱいあってモヤモヤする」。このモヤモヤ、つまり不安が良くない。患者さんに方向性が見えない限り、本当にいい治療はできません。状況を明らかにして、方向性を示し、患者さんにうなずいてもらうことです。
藤波 他に大切なことはありますか。
藤本 「諦め」です。諦めとは仏教用語で「はっきりさせる」という意味。「なるようになれ」と突き抜けたポジティブさで開きなおり、「どうせ死ぬんだ」と覚悟できる方は強い。心身に負担をかけません。
藤波 まるで家族のように、患者に対して親身に寄り添っていらっしゃいますね。
藤本 私の携帯には、患者の番号がすべて入っており、24時間いつでも応対しています。不安があれば聞く。もし、病院に運ばれたら、その医師には、私が説明します。
藤波 安心感がストレスを和らげますね。
藤本 身体にわるいとされる酒、たばこを嗜好するひとでも長寿がいたりします。嗜好品の摂取が周囲に迷惑になることはダメです。でも、本人だけの問題であれば、好きなものを過度に抑えて、ストレスがかかるのは宜しくないです。心が窮屈にならない生活が大切です。
藤波 今後の夢はいかがですか。
藤本 集いの場所を作りたいです。私は動物が好きですし、自然に囲まれる山を買ってみたい。そして、患者さんもそこにいれば病気のことを忘れてしまうのです。
藤波 今日は色々と考えさせられました。


[ Column ]
藤本院長はあるエピソードを話した。20年前に共に末期がんだった女性の友人同士。片方は「治りもしないのに」と言って毎日、大好きな海へ。片方は病室にこもった。ある日、海に行った女性は海難事故で他界。残された女性はすべてを諦めて、病室を出た。それから、好きなところへ行き、好きなものを食べ、今も生きているそうだ。
[ Point ]
この取材を終えてから、闘病を通じて、生きること、死ぬこと、いろんなことを考えました。諦めないこと、そして諦めること―当たり前のようですが、人間の心は身体そのものなのですね。藤本院長の実践する医療を、現在悩んでいるいろいろな方に知っていただきたいです。
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ふじ養生クリニック福岡
院長 藤本 勝洋
福岡県福岡市博多区博多駅前3-7-34
第2博多クリエイトビル 3F
TEL.092-409-1345
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