奈良県大和郡山市
矢田寺で精進料理をいただく

御仏と母上にごちそう様を告げる
「こころばかりですが」と仰られ、障子をあけてびっくり。テーブルに漆塗りの碗、美しい料理の数々。箸をつけて「これぞ料理だ」と頷く。ひとつひとつが丁寧につくりこまれており、感動がある。さぞや腕のいい料亭出身者でもいるのかと思いきや、ご住職の母上がたったひとりで朝から仕込まれたのだという。長崎出身で、精進では異例のあごだしを用いるそう。筍の炊き込みご飯のおこげが最高だ。味噌と共にいただく生麩の田楽のもっちりした歯ごたえ。茗荷や山菜の天ぷらも忘れがたい。デザートは干し柿を使った繊細な細工。ご馳走さまという言葉はもともと仏に向かって発する言葉だと住職に教えていただいたが、思わず母上に手をあわせてしまった。
納骨壇で永代供養し、四季折々の法要を親族で楽しみにする
矢田寺には守る人がいなくなった墓のために、納骨壇で永代供養して頂ける。私も九州にある先祖代々の墓をいかにすべきか悩んでいた。墓に参らないのは心苦しいものの、さりとて遠くて不義理をしてしまう。祖先の墓をこちらにうつすのはどうだろう。少々不謹慎だが、うまいものには勝てない。ここで法事をさせて頂ければ、親戚一同来るのが楽しみになろう。桜や紫陽花の季節に集まるのもよい。祖先の回向と一族の癒しを共にしても悪くあるまい。なんといっても藤波家の人々は花より団子・・・ここならば花と団子に仏もセットだからなぁ。
談:藤波 辰爾
高野山真言宗 矢田寺 北僧坊
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奈良県大和郡山市矢田町3516 http://www.yatatemple.com